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イスラエル・ガザ戦争

 

記事の要約

ガザ戦争が始まってから4か月ほど経とうとしているが、一向に停戦の道筋が見えない。そもそもなぜパレスチナ問題がこじれているのか、また、日本が果たせる役割はあるのか?解説する。

現在の状況

2023年10月7日に、イスラム武装組織ハマスによる奇襲攻撃から始まった、イスラエル・ガザ戦争は本日2024年1月27日時点で4か月に及ぼうとしているが、一向に収まる気配がない。BBCによると、この戦争によって、累計25000人以上のパレスチナ人が亡くなった。

ハマスの奇襲攻撃から始まったこの戦争は、当初においてはイスラエルに国際的な同情が集まったが、イスラエル軍による民間人も巻き添えにしたハマスに対する報復攻撃により、パレスチナガザ地区での死者数は増え続け、現時点においては、逆にイスラエルに対して自制を求める国際世論が高まっている。

そのような国際世論の高まりを受け、イスラエルを一貫して支持してきたアメリカ、バイデン大統領は1月20日イスラエル首相のネタニヤフ氏と電話首脳会談を行った。首脳会談において、バイデン大統領は、パレスチナ問題は「2国家解決」が可能だと強調する一方、ネタニヤフ首相は「2国家解決」は不可能であることを主張した。

イスラエルハマスの交渉による早期休戦を望んでいた国際社会は、イスラエルの強硬な姿勢に失望している。

 

パレスチナ問題の背景

パレスチナ問題の発端として頻繁に語られることは、いわゆるイギリスの「三枚舌外交」である。知っている読者もいると思うが、おさらいする。
イギリスは第一次世界大戦中、ドイツの同盟国であったオスマン帝国と戦うため、1915年フサイン・マクマホン協定をアラブ人との間に結び、その後、1917年バルフォア宣言を表明した。しかし、一方でイギリスは1917年フランス、ロシアとの間でサイクス・ピコ協定を結んでおり、当時オスマン帝国が領有していた、現在のイラクからシリア、パレスチナ地方にかけての地域について、戦後の西洋列強による分割を取り決めていた。これら3つの協定は互いが互いに矛盾しており、現在のパレスチナ問題の発端になったと解説されることが多い。

もちろん、イギリスの「三枚舌外交」がパレスチナ問題の発端になっていることは事実であるが、問題はそれよりも相当根深い。だからこそ、パレスチナ問題が解決不能になっている一因ではあるのだが。

 

問題解決が難しいわけ

問題が解決不能になっている原因について、私は2つほど挙げることができる。

 

第一にパレスチナユダヤ人が神から与えられた土地であるということである。ここでいう神とは、ユダヤ教の神ヤハヴェのことであるが、キリスト教のイエスイスラム教のアッラーと本質的には同一の存在である。ここで、旧約聖書を読んだことがない人のために一つの例として創世記の17章6節から8節を引用する。

 

『17:6わたしはあなたに多くの子孫を得させ、国々の民をあなたから起そう。また、王たちもあなたから出るであろう。 17:7わたしはあなた及び後の代々の子孫と契約を立てて、永遠の契約とし、あなたと後の子孫との神となるであろう。 17:8わたしはあなたと後の子孫とにあなたの宿っているこの地、すなわちカナンの全地を永久の所有として与える。そしてわたしは彼らの神となるであろう」。』

これは神がアブラハムに対して発言した内容だが、今風に要約すれば、「パレスチナの土地はユダヤ人に“永久に”与える」ということなのである。このような記述は旧約聖書のあちこちに見られる。このような記述があることから、ユダヤ教徒は敬虔であればあるほどこれを信じ、パレスチナの土地は全てユダヤ人の土地であると主張することになるのである。

現在のイスラエル、ネタニヤフ政権は政権基盤が宗教右派にあることもあり、少なからず上記のことを意識しているとみられ、イスラエルが今回の戦争で強硬姿勢をとっている一因になっている。

 

第二に、土地をユダヤ人に奪われたパレスチナ人の心情である。

ユダヤ人にとっては、パレスチナは神から与えられた土地であり、2000年ほど昔のことであっても所有権はユダヤ人にあるという論理であるが、パレスチナ人にとってパレスチナは先祖伝来の土地であり、2000年前の出来事など知ったことではないという気持ちがある。また、パレスチナをめぐるイスラエルパレスチナの紛争の過程で、親族をイスラエルに殺されたと考えるパレスチナ人も大勢おり、イスラエルに対する復讐の気持ちがイスラム過激派組織の原動力になっていることも否めないだろう。

現在進行中のガザ戦争でも、多くの人々が親族をイスラエル軍に殺害されており、復讐心が芽生えても全くおかしくないことは十分理解できることである。

 

日本の役割

これまでのパレスチナ問題のいきさつにおいて、日本が一切関与していないことは注目に値する。アメリカを含めた西洋諸国はパレスチナ問題に多かれ少なかれ関与しており、イスラエルパレスチナの間で中立の立場から問題の仲介を図ることが難しいのである。

では、日本は双方にとって中立な立場で問題を解決することができるか、私は「現時点では難しい」と考えている。
戦後の国際社会において、大義のない戦争は国際世論の非難の的になってきた。多くの戦争を行っているアメリカも、開戦に当たっては何かしら大義を作り、国際社会の了解を得てから行動を起こしてきた。私は、この傾向は続き、戦争に対する国際世論の目はより一層厳しくなっていくだろうと、最近まで考えていた。しかし、2021年ロシア・ウクライナ戦争において、ロシアは国際世論の批判を全く無視したまま戦争を継続している。このロシアの行動は、最終的にはうまくいかないと思われるものの、それをイスラエルも模倣しているように思えてならない。イスラエルもまた、国際世論の批判を無視して軍事行動を続けるであろう。

このような現状において、日本が果たせる役割はほとんどないと思われる。あえて、役割を探すというのであれば、国際社会の声が、戦争に対する抑止力になるよう、各国に働きかけることではないだろうか。

 

飛鳥山はるか 

 

参考

https://www.bbc.com/japanese/68045840

https://www.bbc.com/japanese/68045812