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消費税史 朝日新聞編 その1

こんばんは、くらげです。

いよいよ本題というべき、新聞社説分析に入ります。これをやらなければ卒論になりません…。

 

社説と言っても、消費税について書かれているものは山ほどあります。ですが、ほとんどは政権批判に絡めて、消費税についても言及しているだけです。

消費税という制度”そのもの”について、新聞各社がどのように考えていたのかを、時系列的に明らかにすることが本論の趣旨と言えるでしょう。

 

ちなみに、研究範囲は「平成」に限っているので、昭和時代の新聞社説は一切無視します。余裕があれば着手するかもしれませんが、提出が12月であることを考えると、おそらく着手できないでしょう。

朝日新聞社

さて、まずは、朝日新聞から

1989年3月4日

朝日新聞社説『消費者の気持ちを重視せよ』(1989年3月4日)から引用します。

 

 どうせ新税に不満はつきものさ、と政府の関係者の間には消費者へのPRを最初からあきらめている気配さえある。こんなことで新しい税制がうまく離陸するだろうか。

 もちろん、問題はPRだけではない。かねて主張しているように、われわれは消費税そのものに反対しているのではない。しかし、政府が実施しようとしている消費税は事業者が受け入れやすくすることに配慮しすぎた結果、欠陥の多いものになってしまった。免税点の引き下げや簡易課税制度の見直しを含め、制度の欠陥も直さねばならない。

 

社説全体の趣旨は「消費税導入にあたって、事業者への説明は盛んに行われているが、消費者への説明が不十分だ。」ということです。

 

朝日新聞の立場

社説全体の主張は置いておいて…私が重視したいのは引用箇所です。

 

そこには「われわれは消費税そのものに反対しているわけではない。」と書かれています。

なるほど、1989年3月4日の時点で、朝日新聞は消費税の導入に反対の立場ではなかったことが分かります。

 

一方でこのようにも書かれています。「免税点の引き下げや簡易課税制度の見直しを含め、制度の欠陥も直さねばならない。」

ここからは、事業者免税点制度と簡易課税制度を問題視していたことが分かります。

 

免税点制度と簡易課税制度

事業者ではない一般消費者が、これらの制度についてどのくらい理解しているのか分かりませんが、かなり分かりにくい内容ではあります。

この記事では、この点についての説明は省略します。そのうち、あらためて記事にしたいと思います。興味のある方は以下に財務省HPへのリンクを貼っておきますので、そちらをご覧ください。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d06.htm

 

まとめ

朝日新聞の消費税に対する考え方をまとめると次のようになるでしょう。

 

免税点制度や簡易課税制度などの”欠陥”の見直しは必要だが、消費税の導入自体には反対しない。

 

1989年3月30日

消費税は1989年4月1日に導入されたので、その直前の社説です。

 

朝日新聞社説『消費税は早急な見直しを』(1989年3月30日)から引用

 実施後であっても早急に見直しが必要なのは、つぎの点である。

 第1に、自己記録による帳簿方式を続けている限り、消費税への信頼は生まれない。欧州共同体(EC)諸国が実施しているように、税額票の発行を義務づけるべきだ。

 第2に、売上高3000万円の免税点はイギリス、フランス、西ドイツなどと比べても高過ぎる。1000万円程度に下げるべきだ。

 第3に、小売業者の仕入れを一律80%(卸売業者は90%)とみなす簡易課税制度は、業者間の不公平を生む。これを廃止しても、伝票方式をとれば仕入れ控除はきちんとできるはずだ。

 以上の措置をとれば、消費者の払った税金が事業者のふところに入る分を少なくすることができる。また、消費税が信頼され、制度になれてくれば、生活必需品の税率を下げる半面、ぜいたく品の税率を上げるという複数税率に移行することも可能になろう。逆進性を少しでも緩和するために、EC諸国がとっている措置である。

 今回の税制改革の狙いの1つは、サラリーマンの重税感をやわらげることにあった。消費税の導入による税収は、既存間接税の改廃分を差し引きすると2兆円に対し、所得税減税は3兆3000億円とこれを上回っている。

 それにもかかわらず、サラリーマン層の不満が根強いのは、事業者には「みなし法人課税」などの優遇措置がそのまま残されたうえに、消費税が一部の事業者に取り込まれてしまうためだ。株式や土地でもうける人の資産課税が不十分なことも指摘されている。

 このうえに便乗値上げが重ならぬよう、政府は万全の体制で臨んでもらいたい。

 

 

社説全体の趣旨は、引用部分とあまり変わりません。

 

見直しが必要な点

先ほどの3月4日の社説をより具体的に説明しています。

消費税の見直しが必要な点として、3点が挙げられていますが、要するにこれらは、免税点の引き下げとインボイス制度の導入を主張していると思われます。

 

ちなみに、免税点の引き下げは2004年に実現しています。インボイス制度の導入は令和元年時点では、まだ実施されていませんが、実施される予定です。

インボイス制度についても説明が必要と思われますが、簡易課税制度の絡みであるので、その時にあわせて解説します。

 

複数税率」の提案

加えて、朝日新聞は、逆進性の緩和策として、将来的な「複数税率」の導入を提案しています。

この主張は、「軽減税率」という形で実現したと言えるでしょう。

 

消費税導入の目的

消費税導入の狙いの一つとして、朝日新聞は、サラリーマンの重税感の緩和を指摘しています。この引用記事では使われていない言葉ですが、「直間比率の是正」が消費税導入の理由でした。

財政再建」や「社会保障の充実」という目的はこの記事には書かれていません。もちろん、1989年時点で財政再建について語る必要はなかったのですが。

 

まとめ

3月30日の社説では、消費税の”欠陥”の具体的な見直しや、「複数税率」の提案、また、消費税導入の目的が語られています。

財政再建」が目的として掲げられていないのは、当時の状況からして当然ですが、「社会保障の充実」などが目的として挙げられていないことは注目したい点です。

 

1989年4月27日 

1989年4月25日、竹下首相は内閣総辞職を表明しました。直接の原因はリクルート事件です。リクルート事件については、別の機会に触れたいと思います。

実際に内閣総辞職となったのは6月3日です。

以下の社説は辞職表明を受けたもの。

 

朝日新聞社説『強行採決は許されない』(1989年4月27日)から引用

 

 自民党は、このあいまいな時間を自分の都合のいいように利用しようとしている。首相退陣表明のその日、衆院予算委員会で予算案の審議を単独で強行した。きょうにも採決して、連休前に衆院通過を図る構えだ。

 予算といえば国民生活の隅々までかかわる。その審議は、慎重に徹底的に行われなければならない。衆院予算委員会では、税金を集める消費税法案を自民党の単独採決で可決した。いままた、税金の使い方をきめる予算案も単独採決しようとするのか。

 権力の所在があいまいないま、自民党強行採決することは、政治責任のありかたに、いやしがたい悪例を残す。この点を、何より憂える。

 

 まとめ

昭和の出来事ではありますが、消費税の導入は強行採決によって決定されました。その経緯については「消費税史 昭和編」で簡単にではありますが、触れています。「昭和」の出来事ですから深入りはしません。

 

そして、この社説にもあるように、平成元年度予算も強行採決されました。ただし、この時予算委員会の審議が停滞していたのは、消費税のことよりもリクルート事件の影響の方が強かったのかもしれません。

 

 記事のまとめ

朝日新聞は消費税導入自体には反対せず、免税点や簡易課税などの制度的な見直しを求めていたことが分かりました。

しかし、消費税をなぜ導入しなければならないのか、という点については、社説を読む限りではあまり多く語られていません。ただひとつ、「サラリーマンの重税感の緩和」という点が挙げられているのみです。

ただ、消費税の導入が決定したのは昭和のことですから、もう少しさかのぼれば、導入しなければならない理由について詳しく書かれた社説もあるかもしれません。

 

 

今日は竹下内閣時代の朝日新聞社説を分析してきました。他にもたくさん記事はありますが、私が重要だと感じたのはこんなところです。

なんとなく、朝日は消費税導入には反対していたんじゃないかと予想していたので、驚きはしました。

 

それでは、今日はこんなところで