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免税点制度と簡易課税制度

さきほど、「消費税史 朝日新聞編 その2 」を書いたばかりですが、まだ余裕があるので、予告していた「免税点制度」と「簡易課税制度」について解説しておきましょう。

財務省HPのリンクも一応貼っておきます

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d06.htm

 

消費税の中小事業者に対する特例処置

政府が消費税を導入しようとした時、当然ながら国民は猛反発をしました。

そこで、政府は事業者を懐柔するため、特例処置を導入することにしました。

それが「事業者免税点制度」と「簡易課税制度」です。

 

事業者免税点制度

財務省HPから引用すれば

「 前々年(個人)又は前々事業年度(法人)の課税売上高が1,000万円以下の事業者については、その課税期間について、消費税を納める義務が免除されている。」

 ということです。

これはあまり説明は不要でしょう。

課税売上高1000万円というのが免税点、というわけです。

そして、消費税導入当初は免税点は課税売上高3000万円に設定されていました。

 

この免税点制度は西洋先進諸国でも実施されている事ではありますが、免税点が3000万円というのはあまりにも高いということで批判を受けていました。

2004年(平成15年)には、免税点が1000万円に引き下げられ、ほぼ適正となったことで、今日ではあまり問題視されていません。

 

簡易課税制度

消費税の優れた点については「消費税は優れた税制」ですでに解説しました。

つまり、誰かが消費税を誤魔化したとしても、その分を誰かが補填しなければならないのであり、最終的には納税額として、(最終小売価格)×(消費税率)が確実に集まるのであり、国にとってみれば、これほど優れた税制はありません。

 

しかし、これには抜け道が用意されていて、それが「簡易課税制度」なのです。

事業者がいくつかの商品を販売する時、各商品の売上高も商品ごとに違うのは当たり前ですし、各商品の仕入れ価格が違うのも当然と言えるでしょう。

それでは、「事業者の事務処理経費が大きくなってしまう」という声が消費税導入当初にはありました。

そこで、簡易課税制度の利用を申請した事業者には「みなし仕入れ率」を認めることになりました。

見なし仕入れ率は業種ごとに異なっていますが、それは財務省HPをご覧ください。

 

何が問題なのか分かりにくいと思いますので、またまた『「消費増税」は嘘だらけ』(高橋洋一、2019年)から、具体的な例えを引用したいと思います

 

 たとえば、みなし仕入れ率が50%と決まっているサービス業などでの業種は、100万円の売り上げで8万円の消費税を受け取ったときに、仕入れ率を50%とみなして計算することが出来ます。仕入れ額は50万円となり、その8%分の4万円を控除できます。納付する消費税は8万円−4万円=4万円になります。

売り上げ:100万円           消費税8万円受け取り

見なし仕入れ額:100万円×50%=50万円 消費税4万円支払ったことに

納付する消費税:4万円(8万円−4万円)

 実際には、仕入れ価格が30万円で、2万4000円の消費税しか支払っていないとすると、本来納付すべき消費税額は、8万円−2万4000円=5万6000円です。

売り上げ:100万円      消費税8万円受け取り

実際の仕入れ額:30万円     消費税2万4000円支払い

納付する消費税:5万6000円(8万円−2万4000円)

 見なし仕入れ率を使うことによって、事業者が1万6000円の得をします。こういう益税があるため、消費税はかなりの徴収漏れと不公平が発生しています。

 インボイス方式を導入すれば正確な仕入れ価格が分かりますから、実額控除となり、益税はなくなります。(p142~143)

 

たいへんわかりやすい解説です。お分かりいただけたでしょうか?

 

インボイス制度

最後にインボイス制度についても触れておきたいと思います。

高橋氏の引用文献にも書いてある通り、インボイスを導入すれば益税はなくなります。

インボイスとは、受け取った消費税の額を明記した請求書、納付書のことです。

実際にインボイスを導入したところで、事務手続きはさほど煩雑にはならないと高橋氏は述べていますし、早く導入して欲しいものです。

 

まとめ

免税点制度と簡易課税制度について、お分かりいただけたでしょうか?

消費税を語るうえで、このような税制の知識は必須ですから、私の勉強もかねて、今後もこのような用語が出てきたら、随時解説していきたいと思います。